英語あそびなら天使の街

在L.A.言語オタ記。神さまのことば、天から目線の映画鑑賞日記。

映画 Roma (2018) を見た。アルフォンソ・クアロンの『ROMA/ローマ』

いかにも金獅子賞。白黒、字幕で2時間超引き込む物語のバキューム力。
Gravityと同様、絵と時間両方の間の切り取り方がとても美しい。

子どもが遊び回る中で射撃をし、映画館でも喫煙でき、パーリーではワインと哺乳瓶が同じテーブルに並ぶ、なんかもういろいろとざっくばらんなローマの日常生活の描写、イヌやトリの自由さがいい。
でも病院には今でも通用しそうなプロフェッショナルが揃っていてものすごくアンバランス。

それにしても、あの口だけはやたらエラそうな金のないミシマ的エセマッチョ野郎に対する怒りをどう処理すればいいのか。

来月になればNetflixで見られるというのに劇場は満員だった。
Private Life、22 July、そしてThe Ballad of Buster Scruggs...Netflixの配給作品は粒ぞろいだなあ。

(11/30/2018追記)
ニューヨーク映画批評家協会賞の作品賞も獲得〜。

(11/26/2018追記)
ミシマの自決も1970年だった。11/25に「今日の出来事」として流れてきて知った。この映画のボクが新聞やラジオに接していたかは疑問だが、日系マーシャルアーツ業界を通じて、同時代のグロマッチョな「気分」を共有していたのかもしれない。

この物語の舞台は1970年から1971年。大阪万博が開かれた年である。
私は日系人から日本人の親に連れられ万博見物のために渡日した話を聞くのが好きだ。
たいていは「混んでた。月の石?そんなのあったの?」なのだが。

五輪2020(予定は未定)は莫大な賄賂で貧乏クジ引いたし、万博も、カジノをゴリ推ししたい界隈の資金力を考えると結局決まっちゃうんだろうな、と諦めの心境でいたら果たせるかなそのとおりになってしまった。
パリが返上したこともあり、残りものにない金はたく見栄坊の愚かなお人好し、マルチに騙される世間知らず感すごい。
五輪もそうだったけど。

私のOsakaがさらに老い恥さらすとこ見たくないよー。ほんまに目ェ覚ましてください。

五輪も、今なお返上したほうがいいと思ってる。
賄賂により決定してしまった時、ひとつだけ希望を持ったのは「日本は外圧に弱いから、開催が決まった以上、福島のunder controlだって死ぬ気で実現するよ」というあるツイートだった。確かにそうだな!復興のドライブにはなるよね、と思って。
... 結局あれから5年たったけどひとつもいいことないですね、今のところ。

トレーラー。

Be brave, respect others.

キリスト者であれば誰でも神の言葉を武器として携えています。
私が日常で一番よく使う武器はこれです。

「下がれ。サタン。」 (マタイ16:23から)

ええ人ぶってイエスをたしなめたペテロに対してイエスが投げつけた言葉です。
私もキリスト者としてイエスと同じ権威を持っているので、よくない考えがポッと浮かんできたときによく使っています。

次に多いのがこれです。

互いに人を自分よりもすぐれた者と思いなさい。(ピリピ2:3から)

パウロが信徒に充てた手紙の中の言葉。
私がいかに頻繁に人をバカにしたり、見下したりしたくなる衝動にかられているかが分かります。

そこで人さまに対して敬意を払うことについて。
(本当はrespectのほうが真意に合うのですが、どうも日本語でリスペクトとか言うのいやらしくて好きではないので)

ニューヨークであるイラストレーターの短期クラスをとったことがあります。
ニューヨークの一流誌の表紙を描いているような人でした。

で、今となっては生徒の作品のクリティーク(特に自分がほめられたとき)以外で彼の話はほとんど覚えてないんですけど、ひとつだけいつでも思い出す指針があります。

Be brave, respect others.

彼は、アートをやっていくには?という文脈でこう言ったはずです。
おそれずに描け、でも他人への敬意は忘れるな、と。
でも、上の聖句と同時に、いつも思い出される言葉になりました。

先日日本に行って、「人に世間に迷惑をかけるな」という物言いがまん延しているのにうんざりしました。
誰にも「迷惑」をかけずに生きていける人なんて1人もいないでしょう?

親御さんたちへの「子どもにどんな人に育ってほしいか」というアンケートでも
「人に迷惑をかけない」
という答えが一番多かったというのを何かで読みました。
それって目指すべきキャラクターなんですか? 質問の答えとしてもおかしくね?

窮屈です。

だから「迷惑かけるな」を「人さまに敬意を払いなさい」に言い換えてはどうでしょう?
そのほうが、同じく人に迷惑をかけないにしても、ずっと能動的でクリエイティブで楽しい感じがしない?

☆☆☆

ところで、見たかった『万引き家族』『カメラを止めるな!』の両方を空の上で鑑賞できたのはうれしかった。

Shopliftersは、今週LAでも公開され、大絶賛されています。
樹林だー、フランキーだー、みゆちゃんだーとか分からない人が見ると、さらにいい作品に見えると思う。
前知識なく見られる観客がうらやましい。
いつも思うのだが、「欧米」から耳を傾けるに値する、と評価されるのは、日本人でも今の日本の政権と言葉を同じくしない人たちであることに多少なりとも安堵する。
是枝監督しかり、村上春樹しかり、そして天皇皇后両陛下しかり...

話はそれるが、日本で会った30代の人が米中間選挙のことを聞いてきた流れで、「来年の参院選がんばりな。消費税アップはまだ止められるよ」と言ったら、「代わりになる人がいないからねー」とどこかで聞いたようなことを言い出してビックリした。
一度ちゃんと彼の国会の答弁を見るように言った。むしろ彼以外なら誰でもいい、と思うようになるよ、と。

『カメラを止めるな!』は期待しすぎた。
「最初の30分は我慢だよ」
「後から見返したくなるよ」
「三谷に似てるけど、三谷を超えちゃってるんだよ」
と聞いていたのだけど、これを褒めてる人はむしろ三谷を見たことがないんじゃないの??と思った。
『ラヂオの時間』の劣化版でしかなかったし、生理的にも好きじゃない点が多々あり。
ごめんやけど、タダで見られてよかった...
みんな本当に1000円なり1800円なり払って満足しているんですか?

ザ小劇場な下北な中野な世界観は懐かしくはあったんですけど。

トレーラー。

映画 Widows (2018) を見た。スティーヴ・マックイーン『ロスト・マネー 偽りの報酬』

一切贅肉のない構成、美しい秀作。
でも、暴力が過ぎて決して好みではない。
特にワルモンの衝突死はわりと日常に近いだけに夢にでそう。怖い。

日常の暴力といえば昨年の今頃、自分の教会では感謝祭の行事がなかったので友人の教会の特別集会に行った。
10人くらいの兄弟姉妹が病気の時に助けられたとか、経済が守られたとか感謝の証をする中で、1人の男性が言った。

「今日は姉の誕生日なのです」

おお。

「10年前に殺されたんですけど」

マジか重いわ。

その後に続いたであろう彼の感謝の証は全然覚えてない。

サクサク人が消されて行く中でそんなことを思い出していました。

アリス役をジェニファー・ローレンスが断ったということですが、エリザベス・デビッキでよかったと思う。
サイボーグのような美貌ながら若干のアホ成分も見られなくはなくて、すぐ脚を開く、暴力男を受け入れてしまうという役柄(でも他のウィドーズとは一味違ったストリートスマート)に説得力あり。

ヴィオラ・デイヴィスのラストシーンはとても好きです。

原作。

トレーラー。

映画 Instant Family を見た。『インスタント・ファミリー 〜本当の家族見つけました〜』

どれだけレーティングが低くてもめげずに見ようと決めていた作品。
ホントに私のまわり&いつも参照している批評メディアでは予想どおりすぎる評判で笑った。

カリフォルニアのフォスターケアのしくみ、実態、そして家族のかたちをかいま見るには面白い。

マーク・ウォールバーグは役に恵まれない人だなーと思っていたが、本作のお父さんはいい。
「子どもの前にパートナーが第一」の姿勢(アメリカ人夫婦としては当然ですが)が素晴らしい。

個人的には、フォスターケアのアレンジグループのモデレーター、カウンセラーら(演じるのはオクタヴィア・スペンサーら)の仕事ぶりが立派で、私もあんなふうに頼れるヤツになりたいなと思った。

このレベルの作品であえてあげつらうのも野暮なのだが、リジーがやや軟化する2シーンでスローモーションになるのは絶対おかしいし、差し込まれる音楽も80年代の映画みたいで妙だった…
養子の1人がエンドロールで歌い出すのも「日本版主題歌」のようです。

私が拡張家族に関心をもった20年近く前の1冊。ニューヨークの魔法シリーズの岡田光世氏のルポ。
今読んでもほとんど古びていない。

トレーラー。

映画 Green Bookを見た。メリークリスマス。『グリーン・ブック』

素敵なザ・クリスマス(キリストのミサね)映画。
2人の旅のゴールは家族で過ごすクリスマス。

グリーンブック(字幕版)

グリーンブック(字幕版)

  • ヴィゴ・モーテンセン
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早速、「ショパニスク」Don Shirleyの音楽を聞いています。残念ながらショパンの演奏は見つかりませんが...
秋になり賞狙いの実話ベースモノに食傷気味でしたが、2人の友人同士の設定を借りた"true story"はとっても楽しかった。
たくさん笑ってちょっと泣いた。

ヴィゴ・モーテンセン、めちゃめちゃいいな。

お約束いっぱいの脚本もいい。すごーーくいい。
伏線が張られた瞬間にどう回収されるか想像がつくのだけれど、その帰結はどれも垂直に胸に入ってきた。
イタリア語もショパンも石もお連れ合いへの手紙も...。
(特にイタリア語でトニーを引き止め、昇進のオファーを出すところは好き。トニーじゃなくても、ピアニストを守ってあげたい気になる)
警察の2度使いだって、ああ今回はGood newsなんだろうなあ、って分かるんだけど、それがまたホントに幸せなのよ。

最後の「ドアをノックしたのは質屋だった」もお約束中のお約束!!!
観客みんなで「あれ、ちっちゃ」と拍子抜け。
実にラブリー!!!

ベタの快楽に肩まで浸かりました。

もちろん、アメリカロードムービーファンにはたまらない仕掛けもたっぷり。
偽善が何層にも入り組んでいる深南部、私はこの物語の20年ほど後にあの地に暮らしました。

人種だけでなくクラスの違いもあったりして、この物語の象徴であるグリーン・ブックがなくても(レストランやトイレが分けられていたような時代と場所の設定がなくても)お話として十分に機能したんじゃないかと思った。1人の他人という未知との遭遇。

ここに描かれたある友情と、その間に可視化されたcourageとdignityに感謝。
クリスマスにはすべての人に共に過ごす誰かが与えられますように...。

(11/18/2018 追記)
礼拝に行く道すがらこの映画のシーンを反芻していたら、ゴスペルの準備としての酒というメタファーがあったことに気づいた。

物語が進むにつれ、
手酌独り飲み > さし飲み > 最後はワインを持参して家族宴会
にグレードアップしているのだ!!

イエスが最初に起こした奇跡。
それは、婚礼のために水を上等のワインに変えたこと。
つまり、彼は伝道の始まりに、私たちとの結婚・私たちと神との祝宴の準備をしてくれたのでした。
ハレルヤ。

(2/24/2019追記)
気に入った作品が栄冠を勝ち取ったわけですが、いろいろあっていろいろあった今となっては微妙な気分です。
ちょっとイラっとしてる評者たちの言葉を。
(Oscar goes to Green Book.) And not for depictions of race in the movies. - Wesley Morris
Congratulations to “Driving Miss Daisy” for being the first movie to win best picture, twice. - Aisha Harris

ingoditrust.hatenablog.com

トレーラー。美術もカッコいい。最後のシーンをもう一度見たいから、ストリーミング始まったら買う。

ちなみに、「木枯らしのエチュード」はこのイタリアのピアニストのが一番好きです。今のところ。

あとは、真打キーシン。